2013-07-29

9W (New York)


ニューヨーク9Wへ

前回に引き続きニューヨークロードバイク記。いまニューヨークのサイクリストのなかでは、マンハッタン島からハドソン川沿いに北西に伸びる道、9Wがトレーニングやロングライドのメッカになっているらしい。JさんはじめImaichi Cyclingの皆さんと一緒に9Wを走ることになった。

待ち合わせはセントラルパーク
まずはセントラルパークを1周弱。左右のコーナリングと、ちょっとした暖斜面があって飽きない。道は自動車2車線ぐらいの幅があり、ロードバイクで巡航していてもまあまあ余裕はある。(ただし、ジョガーも多いので、それなりに。)気持ちいい。



9A、ハドソン川東岸を北上
市街地を抜けてハドソン川の岸沿いに北上、マンハッタンを抜ける。アメリカでは初走行なので、右側走行とか、信号左折になれるまで少し気を使うが、先導してくれているTさん、Oさんを見ながら走っていると徐々に慣れてくる。



GWB(ジョージワシントン橋)で渡岸、9Wへ
道路が橋に接するポイントは道路状態が自転車に向いていないので、ちょっとだけ、う回路を使って仕切りなおしてから、橋の遊歩道にアクセスする。(日本でも、こういう構造はよくありますね。)橋のうえは遊歩道なので、歩行者がいれば徐行。橋を渡ると都会の喧騒がぐっと静まる。

9Aを離れて、病院の右側を通る

 GWBからマンハッタン方向

サイクルショップSB
アメリカで初めて見た、いわゆるロードバイクのプロショップSB (Strictly Bicycle) ガラス張りの店舗と広い駐車・駐輪スペースで、しいて言えばNalsmaみたいなモンだ。やあ、サイクリストがいっぱいいる。いろんなチームが集結地点に使っているようだ。ここでさらに集合を兼ねて休憩。Oさんが親切に準備してくれたドリンクを飲み干す。



まずはHenry Hudson Drive
人がそろったところで出発。往路は9Wそのものから開始せず、9Wの東側を並走するHenry Hudson Drというの森林コースを使う。この道からしてやられた。私のロードバイク人生の中でもトップを争うほどの良道である。左側は堆積層の崖、右側も斜面になっていて、下った先にはハドソン川が見える。基本的に深い森で、日影が多い。交通信号や看板なども一切なし。自動車の往来もゼロ。道幅は1.5車線ぐらいと理想的な環境である。素晴らしすぎる、、、。


奥の坂道へ
Henry Hudson Drから、Alpine Approach Roadに切り替える地点に到着。ここでそのまま直進せずにヨットハーバーのようなところに降りる坂を下る。ここは通称「奥の坂道」を仲間の間で呼ばれているそうで、この坂道をプチ・タイムトライアルの起点に使うらしい。確かにそういう感じである。正確な数値は忘れたが、私のフィーリングでは10%が4kmぐらい続く感じかな?


皆さん早いので、どうにかこうにか後ろに遅れながらもついていく。600mmのTrekが重い。というか重心の位置が一向に分からず、左右に振っても、ダンシングしても、なんかスカスカする、、、、。

ハドソン川の絶景ポイントへ
その後9Wをかすめつつ、コロンビア大学敷地の入り口付近で右折し再度、森の中に突入。こんどはガレ場の林道で勾配も険しい。これは2kmぐらいだろうか。



それを突破した先は、ハドソン川に面した断崖絶壁のうえだった。これは中々の鳥瞰で、疲れも吹き飛ぶ。みんな一時休憩。Oさんの新型ドマーネと一緒にパチリ。(かっこいいな)





その後、再度ガレ場を通過して、9Wに復帰。ここからは大型幹線道路でのクルージングモードに入る。やはり、ドラッグさせてもらえるとありがたい。

Piermontに到着
今回の目的地は、マンハッタンから40kmほど北にあるハドソン川河畔のPiermont市。



Piermont Bicycle Connectionというショップでバイクを止めて、店内でくつろぐ。サーベロの新型マシンやBMC TM01なんかが並ぶ。心地よいショップで、いろんなサイクリストが集っていた。Gypsy donutというドーナツをほおばって休憩。





この先、さらに北上すればBear Mountainがあるという。そこもまた絶景ポイントでサイクリストにとっては最高のコースらしいのだが、マンハッタンからは往復160kmコースとなる。ちょっと厳しいね。いずれ挑戦するぞ、、、と心に決めつつ、皆さんと帰路に就く。

帰りは9W一本でクルージング
帰りの9Wは、ややアップダウンをこなしながらも全般的には下り基調。マドンのJさん、CAAD10のKさんにダブルアシストしてもらって、それなりに気持ちよくクルージング。ああ、こんな日が月に1回でもあればいいのに、と思いながら景色の流れを楽しむ。

全般的に9Wは、片側2車線プラス予備の1車線がある国道で、車の往来はそれほど多くない。サイクリストは大量に発生しているが、トレーニングであってもカーボンチューブラーを履くようなシリアスなライダーの比率が高いと感じた。

帰りはあっという間である。往路と同じくサイクルショップSBでいったん休憩し、それぞれ解散。私は3人のグループでマンハッタンにまで帰る。

マンハッタンに入ってからは、ハドソン川東岸の小道を走る。ここは観光客が多い整備された公園という感じで、高速に走るようにはできていないが、ふつうの人がサイクリングするには丁度いいだろう。そのまま海の方向に南下し続けて、最後には69th StreetのあたりでOさんと遅めのランチ。



最後に、セントラルパークに入って自転車を返却。Oさんと分かれて私は地下鉄でPark Av. 39thのホテルへ帰還。これでも15時前である。シャワーを浴びてゆっくりしても、もまだ夕方の時間がある。

いい一日であった。



Bike and Roll (New York)


ニューヨークでロードバイクに乗る

仕事の関係でニューヨークに行くことになった。ほんの短期間だけど、せっかくなのでニューヨークでロードバイクに乗ってみようと思い立った。

そこで最初に思い浮かんだのが、大学時代の畏友Jさん。彼については、Road in New Yorkというブログがあって、私も愛読しているのだが、要点をいうと以下のようなスバラシイ人である。かねてよりリスペクトしているJさんとの再会もかねて、NYに行くときは彼と会おうと決めていたのであった。

 Road in New York
厳冬の長距離ライド in ニューヨーク: まとめ
セントラルパークでのタイムアタック
肋骨損傷ブルベ
自転車の国への切符
UCIアマチュアワールドチャンピオンシップ


さっそくJさんに連絡してみたところ、快い返事が。ライドの日程、コースなどいろいろと提案してくれた。また、チームImaichi Cyclingのメンバーにも声をかけてくれることになった。

さて、そうなれば必要なのは現地でのバイク調達である。今回はPTO (Paid Time Off) の取得に失敗してしまい、バイクに乗れる日は週末の1~2日程度だ。となると現地でレンタルするのが一番手っ取り早そうだ。

Jさんに相談するとBike & Rollという自転車店を紹介してくれた。ニューヨーク・マンハッタンのあちこちに店舗があり、レンタルを行っているらしい。さっそくウェブをチェックしたところ、だいたいコンフォート:44ドル、クロスバイク:53ドル、ロードバイク:69ドル(いづれも1日)ぐらいが相場らしい。モデルはTrekのアルミモデル (Trek 1.5) 。ふむ、これならなんとかなりそうだ。

Bike and Roll -- ロードバイクのレンタル料金


出発地点は同店のセントラルパーク西口にある、Tavern on the Green (West 67th Street at Central Park West) という場所に決定。セントラルパークのなかでちょっと広場になっている場所である。早速オンラインで予約をする。予約証を印刷しておく。あとはヘルメットとジャージをスーツケースに詰め込んで出発するのみ。ペダルはフラットで我慢することにした。

 * * *

そして当日

ニューヨークのホテルは、Park Av. 39のあたり。Bike & Rollは8AMから開いているので、7:30ぐらいに出発。自転車に乗るような格好で地下鉄に乗るのもはばかれるかな、と思ったのでタクシーを使う。早朝は道もガラガラで、10分もかからないぐらい。

ニューヨークのど真ん中でいきなりジャージ姿でうろつくのもどうかと思ったのは全くの杞憂。セントラルパークに入ったら、ちょうどロードバイクのレースをやっている最中で、ゴール地点を見ることができた。レースに関係ない人も含めたら、100人ぐらいはロードバイクを走らせていた。心が躍る。



そしてBike & Rollの店舗を発見&到着。しかしなんかイメージと異なり、なんとも素人くさい雰囲気が漂う。これはバイクショップというよりも、観光客向けの露店サービスのような感じだ。この時点で視覚的に50%ぐらいは猜疑心に捕らわれる私。



開店準備をしていたドレッドヘアーのお兄さんに、予約証をみせて「乗せてくれ」というと、奥の倉庫に連れていかれた。なるほど、Trekのロードバイクが詰め込まれているぞ、、、なんか無造作に。サイズを適当に選んで渡してくれた1台は、バーテープもみすぼらしく、反射板もひん曲がったような代物だった。

まあ走れればいいやと思いつつリアタイヤを握ってみるとブカブカ。例のお兄さんに「これ大丈夫なの?」と聞いたら「平気平気!」みたいなノリ。自分の感覚では5 BARぐらいだなーと思いつつ、ともあれバイクを受け取って、店舗の近辺で試走した。

サイズ、ハンドル位置は思いのほか良好で、左右に振っても重心の位置を感じることができた。もしビンディングペダルだったら本気で踏めそうな手ごたえ。車体が重いので反応は悪いが、どうにかなりそうだ。ただ、やはりどうも悪い予感がするので、もういちどドレッド兄ちゃんに、タイヤをぐりぐり握りながら、「ほら、これじゃあ空気圧が足りないよ、もうちょっと入れて」とリクエスト。

するとドレッドさん、何を思ったか、携帯ポンプを取り出し、後輪のバルブにスポっと差し込んで、スカスカと空気を入れ始めた。(なんで、携帯ポンプなの??) そのへたくそな手つきに空気がプシューっと全モレ。あわれフラットタイヤに。「アワワ」と思いつつどうするのか見守っていると、なんと奥から大サイズのバイクを持ち出してきて、「こっちは整備ができているから、これに乗ってくれ」という。

なんだ、この男はチューブ交換できないのか?と思って確認したら、オイオイ、600ぐらいのサイズではないか。「ちょっと待って、そっちの自転車を使えというのであればホイールだけ変えてくれればいいから!」と言ったら「いや、オレさ、ホイール変えられないんだよ」との返事。

ガーン。(というか、この返事予想していた。)

しかたがない、Can't help it… 多くを望むのはやめよう。この600のバイクで走れればいいじゃないか、と自分に言い聞かせている私。横で彼がシートポストの高さを調節してくれている。しかし、レンチの回し方が逆だよ、、、。ものすごいバカ力で締めこんでいる彼。

その時、本日お会いした一人目、Oさんが到着。Oさんが開口一番。「回すの逆ですよ」「え?よく知ってるね」「まあ毎日やってるからね」とまあ、一事が万事である。

そうこうしてようやく出発。このバイクも結局5 BARぐらいの感覚だったのだけど、パンクすることはなかった。

 * * *

走り終えて

再びBike & Rollの店舗に帰ってきてバイクを返却。すでにオンラインでカード決済しているので、特に金銭をやり取りすることもなく終了。めでたしめでたし。

ニューヨークでのバイクレンタル

結局メンテナンスされていないバイクを載るという状況に、どこまで対応できるかという問題になる。私の場合、いざとなったら最低限のリペアキットを持っている仲間がいる、という感覚と、それでもだめならばタクシーにでも載せて帰るという気持ちがあって、結果的には出張の一日をバイク・デイに割り当てることができたし、実際にとてもエンジョイできた。

ただ、ホイールを変えることすらできないスタッフの店でバイクを借りるのである。そのあたりのリスクは十分すぎるぐらいあるので、万全の態勢でなければ、クロスバイクでマンハッタン島の中をぐるぐる走るぐらいにとどめておくほうが良いだろう、と思った。私的には、一緒に走ってくれた方々に感謝感謝、である。

以上、ニューヨークのバイクレンタル体験記。私のように出張でニューヨークに行ったついでにロードバイクに乗りたいなーという人に参考にあればと思う。at your own riskという部分は十分にあるが、それでもニューヨーク郊外の道は最高であると言っておきたい。


追記

店舗のお兄ちゃんはメカニックではない。彼はメカニックとしての給料は受け取っていない。したがってホイール交換すらできなくとも彼の責任ではない。そのあたりの機能分担は明白にする、これもアメリカ流だなー、と思う。


2013-05-17

Random things...

最近の出来事をアトランダムに。

3月ごろ、
ガラスコート、Blissを施工。
半年に1回のペースを心掛けているのだけど、最近どうも間隔が伸びてきたなあ。と思いつつ。

4月ごろ、
コンチネンタルGP4000sのグリップが落ちてきたような気がしていたので、今回は新しいタイヤにチャレンジ。久しぶりにミシュランに戻って、新しいPro4Race SC (25mm) を試してみることにした。最近は雑誌でも25mmの評価がやたら高いので、25mmに挑戦。

装着後になって、
気が付いたのだけど、25mmでは、BMC SLX01のフロントフォークの「又」の部分にほとんどクリアランスがない。1mmぐらいあるので大丈夫だと思ったのだけど、実走すると、細かい砂 (<1mm) を拾ってしまう。これがフロントフォークの内側でジャムってしまい、走行に問題が起こった。(リアは平気の模様。)

残念だけど
100mぐらいテストランした結果、フロントだけ23mmを買いなおして再装着した。うーん、Attack and Forceみたいだ。

Pro4 Race (SC) の走行感
GP4000sと比較して、グリップは上がった。私の場合、毎朝走るコースなのだけれども、5%ぐらいの緩やかな斜面で、前輪にウェイトを乗せてフルでトルクを掛ければ、比較的容易にホイルスピンしていた。同じ斜面で、同じようにダッシュしてみたが、ホイルスピンに至るまでのグリップのレンジが広い。

ただ、、、25mmだしね
どうも重さを感じる。耐え切れず、チューブを1段階軽いものに変えた。そうしたら、まあ快適。

そして、その後パンク
数日走っていたところ、出勤時のライドで派手にパンクした。ガリッという音の後、シューと空気が抜けた。ここまで「大穴があいたぞー」というわかりやすいパンクは珍しい。

路肩に寄せて確認したところ、やはり派手な貫通痕があった。問題となった物体は発見できなかった。職場には少し遅れるが、焦らず、てきぱきと修理。チューブは交換したが、今回は比較的大穴であったため、タイヤの裏側からパッチを重ね張りしておいた。

ところで思うのだけど、
こういう貫通パンクって、異物が突き破って侵入すれば、必ず発生する。その意味でチューブの軽い重いは関係ないんじゃないだろうか?私は高校時代にバンドで弾いていたエレキギターのゲージですら11を使うような安全重視派で、タイヤのチューブも重くて頑丈なものを選んでいた。でもどうせパンクするような気も、、、あまり無理することはないかもしれない。これからはR-Airにでもしようかなあ。

ルブは、
WakosのHalf-wetルブを使い始めておよそ1年になる。汚れは多いが、性能上の問題は感じず、現段階では私の求めているルブに近い。

それとね、
このところ体調を崩したり、仕事が忙しかったりで、通勤に自転車に乗れないことが多くあった。そうなると億劫になることもあるのだが、乗ったら、必ず「ああ今日も乗ってよかったなあ」と思いながらゴールする。そうなのだ、迷うなら乗った方が正解なのだ。

2013-03-01

About Wordfast


今回は趣向を変えてWordfastについて書いてみます。

Wordfastは翻訳支援ソフトと呼ばれるもので、海外では非常に大きな勢力になっていたり、性能が良かったりするのですが、その割には日本ではほとんど知られていないので、もったいないなあと思っていました。なので、この機会にちょっと紹介できればと思います。

日本で翻訳支援ソフトで主流なものといえば、なによりもまずTradosでしょう。これは事実上のデファクトスタンダードとなっているおり、その他のソフトは当然ながら、Tradosが比較考察の対象となります。

Trados以外のソフトで、私が知っている(そして、少なくとも多少は触ったことがあるのは)、TratoolMemoQOmegaTTrans-AssistDeja-vuSDLXCatalystWordfast、旧I社のworldserverL社のLogoportあたりでしょうか。Tradosについては、2007以前と以後で、ほぼ別のソフトというべき状態なので、分けて考えた方が良いです。もちろん、全てのソフトに一長一短があります。


いくつかのソフトについて私の雑感を書いてみます。(あくまでも私見です。)

Tratool
おそらくこの分野では唯一のまともに動作する純国産ソフト。感覚的に言うならばSDLXの機能劣化版。シンプルな構成は好感が持てる半面、画面のナビゲーションやインタフェースがいかにも国産的でバタ臭い。機能面では、通常のTM上のセンテンスサーチに加えて、Tratool固有のフレーズサーチという機能が付いている。これは若干興味を引くが、多分あまり使わないだろう。残念ながら、Tratoolでは、(私の知る限り)ターゲット文書を強制的にtxtにする必要がある。もしいまだにそのレベルであれば、その時点で実用には適さない。

MemoQ
ネットワーク的な作業が前提となっている。設計も新しい。サポートや機能が十分にこなれているのであれば、翻訳会社が全面的に導入するという選択肢もあるかもしれないが、価格がネックか。開発やサポート動向の不透明感あり。

OmegaT
メリットは、無料であることと、Javaであることのみ。翻訳ソフトであることを忘れて、コンコーダンス機能を使って、自分用のTMX検索用ソフトのように使うことができるが、逆にいえば、それぐらいしか使用価値を思い浮かぶことができない

SDLX
事実上開発終了し、SDL Tradosとなった。さようなら。

worldserver
最悪のインタフェースで翻訳者にとっては悪夢じゃないだろうか。たしかにソースクライアント的には集中管理ができそうなインプレッションがあるので導入してみたいという誘惑に駆られるだろう。しかし、上手く使えないものを使っては翻訳文の品質も落ちるという明白な事実に、この高価なシステムはいったい誰得?と思わざるを得ない。営業がわざわざ使いにくいものを上手に売っただけという印象。せめて翻訳インタフェースがTrados Studioぐらいになれば大化けする可能性もあるが、それはないだろうな。(なぜならば同じくSDL社のTradosが売れなくなることを意味するから。)いずれにしても大企業向けのシステムであり、翻訳者レベルでは考慮する対象では全くない。

Logoport
当初からネットワーク対応を図った動作概念や、サーバーTMを翻訳者用、校閲者用に分けることなど、当初斬新に思えた。しかし動作はもっさりしていた。LogoportTWに変わった以後はほとんど触ったことがないので、現在の状況はよく知らないが、いろいろな意味でTradosより優れていると感じた点が多々あった。ただ個人が触っても、ほとんどの機能の意味も良く分からないだろうし、無意味であったりする。また、少なくとも当時は背後でWord.dotファイルを使って動作しており、いまや翻訳ソフトとしてはあり得ない過去の設計。なにより、TMの置き場所がL社の管理下に置かれるという時点でほとんどL社以外にとっては意味の無い存在。いろいろな意味でL社の社内ツールでしかない。

Catalyst
ソフトウェア・ローカライズでUser Interfaceをやる人以外は手を出さないでよい。

Trados 2007以前
いかんせん設計には古さが目立つが、日本の翻訳業界ではまだまだ現役の存在 -- なぜならばバージョンアップにSDLにおカネを出すことに業界全体が辟易しているから。つまり後ろ向きな理由で生き残っているというのが、ちょっと切ない。ちょっとまえの日本語DTP業界のQuark 3.xのガラパゴス状況みたいだ。強いて言えば、FrameMakerファイルの処理については、Trados 2007 TagEditorを使ったワークフローが確立してしまっているので、そこはもうしばらく生き残るのではないだろうか。また、Trados Studioに移行したくなく、その他に選択肢の無い翻訳会社もTrados 2007を使い続けるしかないであろう。(でも最新のdocxxlsxTrados 2007で処理するなんて恐ろしくてできません。)逆にいえば、個人翻訳者にとっては2007を捨てずにHDに残しておくメリットはもうしばらくあります。くれぐれもTrados Studioにアップグレードするついでに削除してしまったりしないように!

Trados 2007以後
Trados Studioと名称を変えて再出発した。Tradosと名を売っているが、実際はSDLXにそっくり。SDL社はTrados社を買収したわけだが、実際にはそれによってTradosという存在を市場から封殺してSDLXにしたんだ、-- というのが私の印象。ファイルフォーマットも違う、ワークフローも違う、なにやらソフトが肥大化している、Adobeみたいに隔年バージョンアップでお金を取られる。当然業界は騒然としてだれもTrados Studioには手を出さずにTrados 2007を使い続けることを選択した。そしてSDL社は、Trados Studioへの移行プランをあれやこれやと提案する。というがこの5年ぐらいの状況では?

Trados Studioを使うということは、今後数年間、経常利益のうち一定割合を 年金のごとく-- SDLに支払い続けるということを意味します。それを肯定できる翻訳会社はあまりないでしょう。ソースクライアントにとっては、特に、さいきん翻訳部署を立ち上げました!的な人たちにとっては、そこまでの認識はないことが普通です。大手企業であっても、翻訳担当室の担当者、またはその周囲にいる数名の人の分だけライセンスを購入するのがほとんどだと思います。それならばあまり問題はありません。しかし翻訳会社にとってはこれがまた厄介です。登録翻訳者が50名や100名いたら、その人の分だけライセンスを準備するのでしょうか?もちろん、そんなことはありえません。(当然何とかするでしょうが。)では、肝心の機能強化はどうでしょうか? 強いて言えばTMの「コンテキスト・マッチ」に関わる機能は良い方向に向かっていると感じますが、まともに動作するかどうかは全く別問題です。いずれにせよ非生産的マターがおおく、それらはコストダウンにも翻訳レベルにもメリットはあまりありません

ではWordfastは?

性能のバランスが良いです。Trados Studioと同レベルの機能とインタフェースを有しているし、ネットワークも前提としている。PM機能も充実している(Trados Studioのように無駄/余計な機能で複雑になっていません)。操作体系はシンプルで、現時点で最も洗練されているソフトの一つでしょう。MS Office系のファイル形式はほとんど問題なく処理できます。開発力もしっかりしている(日本語開発力という点ではやや不明かも)。しかもMac/Unix版がそろっているのは、OmegaTWordfastだけではないだろうか?

そして、OmegaTのようなフリーウェアを除けば、おそらくもっとも安い。

ではデメリットは何かないだろうか?
最大のデメリットははっきりと分かります。それは、FrameMakerIndesignの内部タグが扱いづらいことです。これだけは、すでに確立しているTrados系のワークフローほど効率よく作業できないでしょう。FrameMakerIndesginのプロジェクトが多発している場合は、Wordfastを第1選択候補にしないほうが良いと思います。(少なくとも現時点では。)

次のデメリットは、Tradosに慣れ過ぎてしまっていることによる恐れでしょうか。また、日本語処理の"こなれ"という部分では、私の感じる範囲ではTradosに一日の長があります。


とまあそういう訳で、ざっくりと結論を言うと

・使い物にならなくても、0円がよい個人
  →OmegaT
・安くて普通のものが良い人、翻訳会社からTradosを指定されていない個人
  →Wordfast
・Mac / Unixな人
  →Wordfast
・すでにTrados 2007をもっており、それを変えたくない翻訳会社
  →そのままTrados 2007を使ってください
・高くて複雑なものが良い人、翻訳会社からTradosを指定された個人
  →最新版のTrados
・上記のいずれの選択肢にも違和感を感じる人
  →MemoQかなあ?

(自分で開発する、という選択肢はなしの前提で。)

です。(以上)






2012-11-24

TOPEAK RaceRocket HPC

携帯空気入れ再考

携帯用の空気入れは何が良いのか? 難しい問題だ。

もし路上でパンクした場合、確実にチューブを交換し走行可能な状態にならないといけない。ロングライドの途上や山道でのパンク修理の失敗は現実的に危険を伴うし、通勤ライドであっても確実に大きな影響を被る。

何か備えが必要です。万人にとってベストは方法はないかもしれませんが...。

TNI CO2インフレーター
私の場合、屋外でのトラブル対応にはCO2インフレーターで対応することにして、TNIのインフレーター「ダイヤルタイプヘッド(赤)」とボンベ2本を携帯しています。これはこれで評価が高いですね。









それに対して、携帯用の小型ポンプはどうも敬遠していた。なぜって、すごく大変そうなので。気温が30℃以上とか、あるいは5℃以下の環境で600回もポンピングしたくありません。仕事帰りの夜道なんて、考えるだけでグッタリしそうだ。

そこでこのTNIのインフレーター、使い勝手は非常に良いです。チューブのバルブに対してはねじ込み式で装着するので、(ただバルブに押し込むだけのタイプに比べて)より確実に空気を注入することができる。私は過去3〜4回ほど、実際にオンサイトでこのインフレーターを使っています。(そのうち一度は極低温の山中で、ワラにもすがる思いでバルブを開いたのでした。)

TNIのインフレータは評価が高く、ネガティブな意見はなさそうに見えます。しかし、100%の確実性が絶対にあるかというと、そうでもないんじゃないだろうかなあ、と思っている。

問題は、圧が思ったほど上がらないことです。

私がヘタクソなだけかもしれないが、気化熱を奪われて、バルブ周囲が急速に凍り付き、それによってバルブの「噛み合せ」がズレて、若干空気が漏れるような気がする。ボンベを1本使っても最大6~6.5気圧ぐらいまでにしかならない。なぜかな? たまさかの若干のモタツキで、1気圧ぐらいはロスしている感覚だ。(あえて言えば、私的には不可避です。) ボンベの容量の問題なのか分からないが、少なくとも私にとって、納得ができる100%確実な方法ではないなあ、と。

これは復帰性に関わる道具...、つまりこの道具が使えば結果がこうなるという予測性が100%でないと、なんか気持ち悪い。野外でのパンクなんて私の場合なら年に1回ぐらいでしょう。慣熟に劣ったヘタクソならば失敗する、というのでは信頼性に欠ける。

それではやはり、古くからある携帯式ポンプこそがベストなのか。

 * * *

携帯式ポンプの問題は、以下の通り。
  • 形状の特性上、力を込めて空気を入れにくい。
  • チューブのバルブと上手く口を合わせないと空気が漏れるので、実は結構難しい。
CO2インフレータの問題は、以下の通り。
  • 失敗するとそれまで。
  • 押し込み式の場合、口金の形状の相性が気になる。
  • 「ちょい足し」のようなカジュアルな使い方に向かない



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携帯用の小型ポンプとアダプターの組み合わせ



そこで補助ツールの出番です。携帯式の小型ポンプの利便性を改善する有名なソリューションがあります。

グランジ・ポンプ・アダプター
それは「グランジ・ポンプ・アダプター」と小型ポンプを組み合わせる方法です。グランジ・ポンプ・アダプターは神ツールと呼ばれているほどの有名な商品であるので、使い方はググればいくつか見つかるでしょう。簡単に言えば、ホース式のアダプターを小型携帯ポンプに組み合わせることで、充填時の操作性を劇的に改善させてくれます。


 * * *

だがここで、もう一つ別の方法を提案したい。

それはTOPEAK  "RaceRocket HPC"  と、米式-仏式アダプターを組み合わせる方法です。

TOPEAK / RaceRocket HPC




TOPEAK / RaceRocket HPC はシリンダーもハンドルもカーボン製の、軽量ロード用ポンプです。サイズ的にも申し分ない。最大の特徴は、ホースが組み込まれており、ホースを引き延ばして使用できることです。その時点で、グランジ・ポンプ・アダプターを使うよりもスマートな感じがする。


ただし、TOPEAK / RaceRocket HPC は、ただの「押し込み式」なので、そのままでは必ず安心できるとは言えません。差し込み角度は結構シビアであり、少しでもずれるとシューと漏れる。

そこで米式-仏式アダプターを組み合わせます。実際には写真のような感じ。これならバルブと口金の相性の心配もないでしょう。米式-仏式アダプターとして、私はパナレーサー "BFP-FV20 仏式バルブアダプター" を使っていますが、別に問題ありません。これ一つで150円ぐらい。



サイズ的にはTNIのインフレータと比較すれば以下のような感じ。

インフレーターの場合、ボンベは普通2本以上携帯するでしょう。すると、TOPEAKは (1) 容積/重量的に勝る、(2) 空気漏れがなく総合的に信頼性に勝る、(3) しかも手押し式なので「ちょい足し」も可能となる。スマートな方法じゃないかな?

TOPEAK / RaceRocket HPC と TNI CO2インフレータの比較

結局のところ、TNIのインフレーターを使うのか、小型ポンプを使うのか、私の中ではひとつの結論はない。ほんの10秒で6気圧でも入れば、問題のあったサイトから自宅まで自走できる可能性は高いし、それはそれで捨てがたいものがあります。逆に丸一日ロングライドせよと言われたら、迷わず RaceRocket HPC を選ぶかなあ...。

普段のツールボックスにはどちらを入れようか。