例年と同じく、夏休みを取って仕事から離れる時間を作りました。いつもならば家族旅行にでも行くところですが、都合のため今年はほとんど家にいることになりました。(乗鞍に行く予定があったけれど、天候のためキャンセル。)
そろそろ夏休みも終わりなので、久しぶりに近況をまとめておこう。
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クラシックギター近況
BWV 1003 フーガ
バッハのソナタとパルティータ(バイオリン)、スイート(チェロ)、リュート曲あたりの名曲にはクラシックギターに向けたアレンジメントがいくつも存在し、日本の出版社からも手に入る。
私もいくつかの版を入手して、気に入った曲を選んで、自分で弾いてみたりするわけだが、どうしても、BWV 1003(とくにアンダンテとフーガ)については譲れないこだわりがあった。タチアナ・リツコバの2010年の録音である。この演奏があまりに素晴らしすぎるので、私は以前から、この演奏のもとになっている版について調べていたのだ。
実は、手に入る限りの版ではどうしてもタチアナの演奏が再現できない。バルエコ版は運指面でも割と面白く、いわゆる「通常アレンジ」では最高水準だと思うが、それでもアレンジメント自体がタチアナの演奏とは違った。
そんななかでFrank Koonce & Heather DeRomeに出会ったのである。ある日、YoutubeでHeatherが公開しているトレーニング動画を見つけ、それを見たら自分が求めている版のイメージに近いことが分かった。しかもカナダからShippingも対応してくれる! ということで早速注文した。
Andrew Yorkと同じく、こちらもHeather DeRomeを中心とする個人出版のような形式だった。実は輸送に大幅な遅れがあり(3か月!)、その間何回かHeatherとやり取りをしたのだけど、とても気さくで誠実に対応してくれていい人でした!お世話になりました~。
早速届いた譜面をチェック。たしかにタチアナの演奏とはわずかな違いのようである。私も欲しかったものを入手できて大満足である。
さて、肝心の「通常版」との違いである。この曲は通常はソロ・ヴァイオリン版(まさしくBWV 1003)をベースにしている。それに対し、DeRome版はクラヴィーア転写によるBWV 964を並行参照し、ギターで実現しやすいように独自の補筆・配分を行ったクリティカル・アレンジメントのようだ。(私はその筋の専門家ではなく、原曲+公知のクラヴィーア稿を学術的に分析したわけではない。正確な情報かわからないが、ざっと調べたところはそのような感じだ。)
何が本質的に違うのか? フーガらしい主題音列をきっちりと保持して繰り返し使っていることろじゃないかと思う。通常版のほうがちょっとメロディックに響くのだが、私はDeRome版のほうが好みだ。ただし主題を淡々とこなしているだけだと機械的になる恐れもあり、その辺りは(話は元に戻るが)タチアナの演奏のうまい部分だなぁと思う。
そしてこの版を編集して、日本にまで発送してくれているヘザーに感謝である。ハマっている人は全世界に50人ぐらいしかいないかもしれませんが、ちゃんと響いてますよ!
Sunburst、Moontan
以前の日記でこのAndrew Yorkによる2曲の練習をスタートしたと書いた。素晴らしい曲で、練習するモチベーションも尽きない。
正確に演奏することが極めて難しいことが有名な曲であるが、ようやく少しポイントが分かってきた気がする。どちらもテクニカルに譜面通りに弾くこと自体がとても難しいのだが、実はリズムの要素も大きい。譜面通りにジャストに弾くだけではこの曲たちのカラーが出てこず、軽いノリやタメを入れるポイント、つまりグルーブ感があると思われる。
2曲ともそのグルーブ感のテイストが異なっていて、曲想に影響を与えているように思う。弾きながら自分なりの工夫を加えていって、なんとなく思っていた方向に近づけるような作業である。
Sunburstであれば、スラーやトリルの場所はややせわしなく、いわゆる縦ノリで、わずかに前に突っ込んでニュアンスを出す方向で行くのがいい気がする。Moontanの場合は、スキップを踏むような感じで、少しタメ気味でリフを引く。タッピングとスラーの場所は逆にジャストにしたいのだが、ここはそもそも正確に弾くだけで、すでに難題。
ところでライトハンドで大胆にブレークが入るのが3か所あるが、そのうちの2回目、3回目は譜面だと8拍だが、録音を聞くと10に聴こえる...。ちなみにMoontanの演奏では猪井亜美が神級またはお化け級である。私も、彼女の演奏っぽく10拍で弾いてみる今日この頃なのだが、どうやったら綺麗に弾けるんだこれ...。
The Koln Concert IIc
バルエコ編の譜面を入手して、練習を開始。レファレンスとして村治佳織を参考にしているが、あまり「聴かず」に、譜面だけでイメージして弾けるようになるかやっている。クラギでジャズ曲にトライするのは初だけど、やはり面白い。
インプロビゼーションとか、場合によってはラフっぽさを出したいけれど、逆にダラダラした惰性のような動きにならないようにするのはどうしたらよいのかって考えている。
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「統計学の数理(桜井)」の2週目を読了。
1週目は数式を追いかけるだけに始終したきらいがあるので、2週目はさらにゆっくりと全体像をイメージすることを心掛けた。さっと通過した場所にも、気づくことがたくさんあり、新たな満足感を得た。
とくにベクトルや行列については、単純に記号の計算法則のようにとらえるのでなく、具体的な数列(フランス語でいうとセリーである)の掛け合わせ、展開や新座標への変換をイメージしながら考えると、がぜん統計学の面白さが深まる。
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