2010-02-27

筋肉とエネルギー供給について

ロードバイクの楽しさの一つに、エネルギーマネジメントという要素がある。

身体や神経の動かし方や、補給プラン、呼吸法のレベルに応じて、とにかく体からfeedbackががんがん返ってくる。あるいはlog? message? 




例えるなら自分をATPの生産と消費のメカニズムのように見立て、
身体とダイレクトに対話する。そこが面白かったりする。
(もう一つの巨大な楽しさは、やはり自然だろうか...。)

そんなわけで手元にある生理学の教科書から
エネルギーマネジメント面について
参考のため、ちょっと要点をメモ。




アデノシン3リン酸 / adenosine triphosphate (ATP)

ATPは筋収縮のための直接的な化学エネルギー。
だが、筋細胞はフルパワーで数秒のATP量を含んでいるに過ぎない。

そのため細胞内ATP濃度を一定に保つため、
消費されたATPは連続的に再合成されている。


ATP再合成 / ATP regeneration

1. クレアチンリン酸の脱リン酸化
2. 無酸素性解糖
3. 有酸素性酸化 (グルコースと脂肪酸から)


急激なATP再合成に必要な化学エネルギーは
クレアチニンリン酸 creatine phosphate (CrP) から得られる。
2と3は比較的ゆっくりとした反応である。


クレアチンリン酸の脱リン酸化

ミトコンドリアクレアチンキナーゼが、
代謝されたATPであるADPを、すぐさまATPに変換する。
このときCrPがクレアチン (Cr) に分解される。
筋肉細胞のCrP貯蔵量は10〜20秒と考える。


無酸素性解糖 / anaerobic glycolysis

CrP脱リン酸の後 (最大約30秒後) に起こる。

無酸素性解糖では、筋グリコーゲンが、
グルコース-6-リン酸を経て、
乳酸 (→乳酸イオン + H+) へ変換される。

このとき1つのグルコース分子あたり3 ATPが生じる

軽い運動であれば、乳酸イオンは心臓と肝臓で分解される。
その際にH+も処理される。
また、有酸素性酸化によって十分なATPが
供給されないときに、無酸素性解糖も行われる。
この場合グルコースが肝臓から供給されなければならない
肝臓ではグリコーゲン分解グルコース新生によって
グルコースが形成されている。

グルコースの6-リン酸化には1 ATPが必要。
従って供給されたグルコースは
1分子あたり2 ATPのみを産生することになる。


有酸素性酸化 / aerobic oxidation

あまり効率の良くない無酸素性のATP合成の約1分後に、
グルコース脂肪酸の有酸素性酸化が起こる。(= 持久的な運動)
すなわち、グルコースや脂肪酸からの、有酸素性のATP再合成。

このとき筋肉細胞で増加した代謝所要量に対処するために、
心拍出量と全換気量を増加する必要がある。
上昇した心拍はやがて一定になる。

この定常状態に達するまでの数分間は、
無酸素性エネルギー産生と血中O2の取り込みを増して、
筋の短期的なO2貯蔵 (ミオグロビン) を利用することでまかなわれる。
(この2つの位相の間の期間は身体パフォーマンスとしては低い段階。)

ミオグロビン myoglobinO2親和性
ヘモグロビンよりも高いが、呼吸鎖 (チェーン) 酵素よりは低い。
そこでミオグロビンは通常O2で飽和されており、
短時間の動脈による酸素供給不足の間、
ミトコンドリアに酸素を供給することができる。


持久力の限界

持久力の限界 (トップアスリートの場合 apx. 370 W, ≈ 0.5 HP) は、
主に、O2が供給されるスピードと、有酸素性酸化の速さに依存する。

持久力の限界を上回ると、定常状態を保つことができずに
心拍は連続的に上昇する。

筋は一時的にエネルギー不足を補正することができるが、
H+を発生する乳酸は無酸素性ATP再合成に対応できず、
乳酸イオンとH+がどんどん超過していく。
(ラクトアシドーシス / lactacidosis)

持久力の限界を約60% (= 最大O2摂取量にほぼ一致する) 超えると、
血漿乳酸値 plasma lactate 濃度は激しく上昇し、4 mmol/L で、
いわゆる無酸素性作業閾値 anaerobic threshold (AT) に到達する。

この点に達するとそれ以上の有意なパフォーマンス上昇は期待できない。
pHの全身的低下は筋収縮に必要な化学反応を抑制してしまう。
これは最終的にはATP不足、つまり急激な筋の疲労をもたらす。


O2負債量 / O2 debt

約40秒の間だけが、CrP代謝と無酸素性解糖によって、
有酸素性のATP再合成に比べ3倍のパフォーマンスが可能。

でもこのプロセスはO2不足量をもたらし、
それは回復期に補正されなければならない。(O2負債量)

また、激しい運動後のO2負債量では、
O2不足量よりもはるかに大きくなる。(20 L まで)


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